Aiでなければ分からない死因があります


症例:空気

要点整理

  • 刺殺
  • ベットで血だらけになって死亡しているところを発見される。

 

Ai読影

  • 左胸部を刃物で刺された、体表の傷は精査すると確認できるが、CTでは肋骨腹側のfree airおよび気胸、縦隔の右側偏位が認められ、刺入部の推定および緊張性気胸による死亡が疑われる。
  • CTを撮影しなければ、胸腔開検時のアーチファクトとしての気胸と間違えた可能性がある。

 

要点整理

  • Duchenne型筋ジストロフィー
  • 肺炎疑い
  • 痰の増加、呼吸機能の悪化があり、入院。
  • 急激な酸素化の低下、喀痰を気管支鏡的に除去。
  • 痰貯留が継続するため、気管内挿管、人工呼吸器管理となる。
  • 気管切開
  • 死亡一時間半前頃、換気量低下のアラームで看護師が訪室した際、母親が気管カニューレが抜けかかっていることを指摘。当直医到着時には心肺停止状態。
  • Ai撮像。

 

Ai読影

  • 皮下気腫は筋間に存在するようで、左右のコンパートメントに分かれている。

 

緊張性筋間気腫

通常の皮下気腫は、皮下脂肪内に広がることが多いのですが、この症例の場合は、両側胸部の筋の間に入り込んでいます。筋間であるため、左右別のコンパートメントが形成されています。これは、原病による筋萎縮があるためと考えられます。

このことにより、筋膜と筋膜の間に、気腫が入り込んで、エアートラッピングのような状態になっており、両胸が前方に膨らんでいます。

今回のCT撮影は死後2日以上経過してからの撮影ですが、病院内での死亡であり、ご遺体は低温状態で保存していると考えられ、腐敗ガスはそれほど広がっていないと考えます(肝内ガスの状態などから推測です)。

腹側を中心とした広範囲の気腫は、死後変化より、生前に起こった変化と考えられ、この気腫により、大胸筋を弧状に押し上げてられています。

また、筋間に閉じ込められた空気により、胸郭の運動が制限された可能性があります。このことにより、肺が圧迫され、換気が十分に出来なかった可能性があるのではないでしょうか。

→解剖したら分らない

 

解剖で全てが判明するわけではありません

  • 緊張性気胸などの空気関連は解剖時に所見が消失する。
  • 解剖学的構造を理解しないと何が起こっているのか分からない。

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