こんな時にAiを


Aiの必要性について

Aiにはまず、異状死を発見するために行われるスクリーニングとしての意味があります。

体表検視では情報が限られているためAiを実施し、体内の情報(骨折や出血)を得ることは意義があると思います。

これらは病院外で死亡した症例にだけ当てはまるわけではありません。

 

1. 児童虐待が疑われるケース

近年増加傾向にある児童虐待では心肺停止状態で病院に救急搬送される症例もあります。

これは、加害者である両親などが、自宅で発見されると虐待が判明するため、救急車を呼ぶようです。

医療者側としては、虐待が疑わしくても確信がないと剖検を勧めづらく、また病理解剖の場合遺族の承諾がないと実施できません。

これらを解決するためにAiの実施推奨されています(日本医師会Ai活用検討委員会は、14歳まで死亡時全例についてAiを行うよう提言されています)。
 

2. 医療過誤などが疑われるケース

病院内でも手術後急変した症例や、夜間看護師が巡回したとき死亡していた症例など、病態が急変しなぜ死亡したか分からない時にAiは有効です。

この場合は、死因が判明しなくても行った医療行為が正当であったかどうか(つまり手術ミスなどに伴う所見が無いこと)が判断できれば良いのではないかと考えます(あくまでも個人的意見です)。

今まで、このような場合、急変時におこった症状などを説明する材料が無く、説明不足などによる相互不信などから訴訟につながるケースもあったようです。

Aiを行えば、客観的な情報を元に医師が遺族に説明できます。

特に身体を傷つけることなく、短時間に実施でき、結果をすぐ報告できることがAiの利点と考えます。
 

3. 遺族が医療に納得できないケース

1, 2の様に事故や事件性が無くても、遺族としては正確な死因が知りたいと言う要望があります。

これは、通常の病死でも最後の段階では急に容態が変わることがあり、自分の看護になにか落ち度がなかったかなどということを確認したいという要望があること。

もう一つ葬式などで、親戚などになぜ亡くなったかを遺族としてきちんと説明したいということがあるからです。

 

4. 医学の発展のために

主治医の立場としても、自分が行った医療行為が正しかったかどうか確認したいという願いがあります。

本来でしたら剖検が実施されるべきですが、剖検率が2%台にまで下がってしまった現在、遺族の承諾を得ることはかなり困難が予想されます。

また医療費削減、DPCの導入などにより、終末期に検査すること自体が少なくなっています。

最後の画像検査は抗ガン剤治療が行われたときで、それから亡くなるまで3ヶ月以上検査が行われていないということが現実におこっているのです。

つまり実際に亡くなったときの状況を主治医が把握できていないのです。

これでは遺族に亡くなったときの状況をきちんと説明することは難しいでしょう。

 

剖検を行えば良いのでは?

 

既に述べましたが、日本の剖検率は2%台です。

病院で亡くなった場合行われる解剖は病理解剖といって遺族の承諾が必要です。

また多くの場合、頭部の解剖には別に承諾が必要です。このため、体幹部の解剖だけで死因を追求(確定)しなければならない自体が起こりえます。

また、遺族が真相を究明するために解剖を行いたいと思ったとき、通常警察に相談する事になります。

警察が通常行う剖検は、犯罪捜査の証拠集めのために行う司法解剖となります。こちらは強制解剖で、頭部の解剖ももちろん行われます。

ただし、裁判の証拠ですから、事件が解決するまで結果が遺族に報告されない(2年以上かかる場合が60%以上との報告もあります)可能性が高いのです。

また司法解剖が行われると言うことは当然刑事事件ですから、医療行為を行った個人が訴えられるということにもなるのです。

遺族としては真相を究明したいために行った行為のはずなのに、結果としては治療を行った医師を刑事告訴するということになってしまいます。

このような判断をする前に、是非Aiを行ってください。

この情報を元に遺族と医療機関がきちんと対話できれば今後医療訴訟も減少する可能性があります。


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