診療関連死
症例:TUR-P
前立腺肥大症に対して、経尿道的前立腺切除術施行、その後出血性ショックにより死亡。
経過
3月12日 | 尿閉あり、○○病院にてバルーン管理となる。3月25日TUR-P目的にて入院となる。 | |
3月25日 | 13:00 | 入室 |
13:20 | 手術開始、TUR挿入、スコープ挿入 | |
13:30 | 粘膜切除開始(95g)切除 | |
16:43 | 膀胱洗浄 | |
17:00 | バルーン挿入、ワッサー50cc、生食2L灌流 | |
17:05 | 手術終了、バルーン500ml破棄、血圧低下、バルーン700ml破棄、バルーンのつまりあり、手動で膀胱洗浄、8単位輸血 | |
3月27日 | 10:30 | 死亡 |
Ai読影
- 膀胱右壁が限局性に肥厚しており、これより後腹膜脂肪組織内の外腹側へ向かう索状脂肪混濁を認める。
- 膀胱右壁外側にガス貯留を認める。(楕円)
- 前立腺被膜の穿孔と膀胱壁穿通を考える所見である。
ポイント:初動が大事
- 急変症例などはとにかくAiを撮影しておく。
- 遺族側に、こちらが真摯に対応している姿勢を示す。
- Aiの読影は第三者機関に依頼していると遺族に伝える。
- 医師賠償保険の損保に事故届けを早急にする。
診療関連死の場合、まずAiを行うことが大切です。
症例:腎生検
腎生検を施行した3日後の明け方、看護師巡視時に急死していた。
Aiを実施しなかった場合
医師側
- もしかしたら腎生検が原因で、出血死した可能性が…
- 下手なことは言えない、起こった事象に対して説明できるだけの資料がない。
遺族側
- やはり3日前に行った腎生検が原因で死んだのでは…
- やましいことがあるから医者が説明に来ないのではないか?
Ai読影
- 左腎生検からの出血はわずか。
ご家族の反応
- 先生たちが一生懸命やってくれて、主人も喜んでいると思う。
- 死因が検査と関係ないことがわかった。
- 本当によくしてもらった。
- 納得できた。
ポイント
皆さんならどう対応しますか?
- 院内の誰に連絡するか?
- 警察に届けるかどうか?
- 患者家族にどう説明するか?
医療関連死が疑われた場合まず、Aiを!!
遺族が納得するための客観的な証拠を即時提供
症例:消化管穿孔司法解剖
統合失調症のために施設入所中の患者が腹痛を訴え、医療機関を受診。施設に帰室した翌日、死亡した状態で発見された。
経過
7月11日 | 胸部不快感を訴え、嘔吐あり。 | |
7月13日 | 「胃の痛み」が持続するため。近くの○○病院を受診。受診時、BP:103/86mmHg、HR:127bpm、BT:35.7℃であった。腹部単純X腺検査などを受け、便秘症、腸管蠕動不全疑いと診断、浣腸などの処置を受けて施設へ戻った。帰室後も腹痛を訴え動けず、辻褄の合わないことを言っていた。 | |
7月13日 | 23:00 | 様子を見に来た当直員が、部屋の前で寝ている患者を発見し、部屋に運び入れる(生前最終確認)。当時「腹痛は軽減してきている」との記載がカルテにあり。 |
7月14日 | 9:00 | ケアホーム職員が自室の床にあぐらをかき、ベッドにもたれかかるような状態でいる患者を発見。 |
7月14日 | 9:09 | 死亡確認された。CPRは行われていない。 |
7月15日 | 11:57 | AiCT撮像。同日、法医解剖実施。解剖終了後の死体検案書は、急性心不全とされていた。 |
Ai読影
- 向かって右側の左上腹部に消化管外のfree airを認める(白丸)。
- 左横隔膜頂部は軽度挙上し、右横隔膜より半椎体高い。通常は心臓があるため、左横隔膜の方が低いことが多い。
- 消化管内の空気とは異なり、横隔膜の下に直接広がっており(白囲み)、消化管穿孔に伴うfree airである。
- 肝臓の腹側に大量のfree airが認められる(それぞれ矢印)。
- 肝臓の周囲や脾臓の周囲に腹水を認める。いずれも正常では認められない所見である。
- 骨盤部のレベルでは、ダグラス窩に大量の液体貯留を認める(丸)。内部は均一ではなく、背側に濃度の高い液体が沈殿している。一部に空気が認められ、消化管内容物考えられる。解剖所見でも灰茶褐色混濁液汁とあり、消化管の内容物および出血を観察しているものとして矛盾しない。腹腔内に漏れた液体成分は、重い成分が最も低い位置に沈殿するため、死後画像で、出血などの所見はダグラス窩に高濃度の成分が沈殿するような画像を呈する。かなり多量で、解剖所見に記載がある1300mlとしても矛盾しない。
ポイント:死因は?
大量のfree airと濃度の高い腹腔内の液体貯留は、消化管穿孔の所見として矛盾しない。濃度の高い腹水は単なる腹水と異なり、消化管内容物の逸脱であり、ショック死の原因となり得ると考える。
司法解剖で全てが判明するわけではありません
- 穿孔に伴う空気は解剖時消失してしまう。
- 液体貯留などの量や、存在範囲なども画像の方が客観的に分かる。